2007年08月11日

新刊紹介 医療の限界 小松秀樹著 

医療の限界医療崩壊の現場から問う

 著者は泌尿器科医師で、前著『医療崩壊』(昨年5月刊)で病院医療の危機を克明に描きました。その続編とも言うべき本書で、著者は医事紛争が起こる背景として「死の受容が出来ない事」−日本人の生死観、医療行為と事故の関わり、医系大学での教育・人づくりのあり方などがあると指摘し、「なるほど」と納得させます。

 市場原理主義の国アメリカでは、「フロリダ州で産科医療に従事するためには、年間1200万円から2200万円も(賠償保険に)支払わなければならない」など金がすべての医療の恐ろしさを示しています。

 また、「患者は消費者ではない」として、イギリスの臨床医学雑誌の記事を紹介しています。「医療はゲームではない。医療は社会的善であり、公平でなければならない。患者は消費者ではなく、純粋に、ただ単に患者なのである」という指摘は、医療を「患者との共同の営み」と規定する民医連でも「患者様」と言う病院が増えている昨今、学ぶところが大です。ただ、「医療崩壊の原因は患者との軋轢」と前書きで述べている部分など、納得いかない点もありますが・・・。  (清) 
(新潮選書・700円+税)

(北海道民医連新聞2007年8月9日号より)
posted by kin-ikyo at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 新刊・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月27日

新刊紹介 貧困襲来 湯浅 誠 著

貧困襲来
〈貧困〉のからくりを暴く

 すごいタイトルの本が出ました。「いつのまにか誰にとっても〈貧困〉はすぐそこにある時代に突入した」と著者は言います。
 著者の湯浅 誠さんは、東大法学部大学院に通いながら野宿者やワーキングプアの支援活動にかかわり、NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」の事務局長をつとめています。同時に、「反貧困ネットワーク準備会」事務局長として、野宿者やシングルマザー、障害者、難病患者、自治体職員、労働組合、法律家たちのネットワークづくりに奔走している最中です。
 そうした著者が日々出会う人たちを通して〈貧困〉の現実とその背景に迫り、 「〈貧困〉は自己責任の及ばない領域。問題は、政治が〈貧困〉にどう対処しようとしているかだ。・・・貧困に目をつぶる政治家はいらない」と主張します。
 湯浅さんは、「私たちにできること」として「ぼやく」「はじける」「群れる」「攻める」「変える」ことを呼びかけています。まさに、今がその時です。
 (自分の生活保護費を自動計算できるソフトを収めたCDがついています)(晃)
 (山吹書店・1500円+税)

(北海道民医連新聞2007年7月26日号より)
posted by kin-ikyo at 12:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 新刊・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月30日

新刊紹介 9条やめるんですか? 北海道新聞社編

9条やめるんですか?
道内ゆかりの9氏の肉声 
 
 「北の国から憲法を考える」本が出版されました。執筆者はすべて北海道在住か、北海道にゆかりのある人たち9人。
 芥川賞作家の加藤幸子さんは「なぜ朝鮮人は日本語を話せたのか?」を体験的に解き明かしていて、胸にしみます。「現人神の姿に涙さえ流した」三浦光世さんが語る洗脳の恐ろしさ、「わら人形のルーズベルトの目に尖った竹の棒を突き刺した」坂本勤さんの、残虐さを持っている自分への怖れ、「イマジンやジョン・レノンを愛するなら、今こそ憲法9条を世界に向かって伝えるときなのだ」と、熱く呼びかける小野有五さん、「国の命令でネコを殺した」加藤多一さんの、「大切な人生を、どうか他者に任せないで」という若者への訴え・・・。憲法9条が「私」や「暮らし」「北海道」とどう関わっているのかを、9氏それぞれの感性で味わい深く語っています。
 巻末では、小林公司北海道東海大学教授が、「市民が平和を築くために、いま何をすべきか」を提言しています。
 ナチスによる大量虐殺の場アウシュビッツを訪ねるフィールドワークに参加した学生の生駒ひかりさんも手記を寄せています(お母さんは北海道勤医協職員の生駒憲子さん)。(ふ)
 
(北海道新聞社・571円+税)

(北海道民医連新聞2007年6月28日号より)
posted by kin-ikyo at 08:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 新刊・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月16日

新刊紹介 普通の国になりましょう C・ダグラス・ラミス著

普通の国になりましょう
普通の人は戦争をしない

 やさしく読めるが奥が深い、そんな児童書だ。著者は1936年サンフランシスコ生まれ。60年に海兵隊員として沖縄に駐留。80年から2000年まで津田塾大学教授で現在は執筆・講演などで「平和を紡ぐ旅」を続けている。 
 普通の国には軍隊がある。しかし、著者は「普通」とは何かと問いかける。普通って「平均的」のこと?普通って「あるべき姿」のこと? 普通って「アメリカ」のこと? 普通って「正常」のこと? 普通って「常識」のこと? 
 普通とは何かを順々にたどると、現実が明らかになる。世界に軍隊を持たない国が今25ヵ国ある。戦争している国では殺人犯罪率が上昇する。20世紀の間に軍隊が殺した一番多い相手は敵国の兵士ではなく自国の市民だった。日本では歴史上、最も戦死者が多かった時代は最も軍事力が強かった時代であった。 
 改憲と護憲、どちらが日本が平和である可能性が高いか。これには現実主義者であれと説く。戦争と平和に関して最も重要な現実は歴史の記録だ。つまり、いままで軍事力を持っていた国は、戦争をうまく避けられなかった。 
 戦争しないことが普通になる世界をつくらないと人類の生存が危うくなる。
 「普通国」になろう、これが子どもたちへの著者のメッセージだ。   (ふ)
 (大月書店・1200円+税)
(北海道民医連新聞2007年6月14日号より)
posted by kin-ikyo at 08:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 新刊・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月12日

映画評 日本の青空

日本の青空
北海道民医連新聞2007年4月26日号より。1.39MB(03:01)

共感と確信の拍手 胸打つ日本国憲法誕生の真相

いよいよ憲法をめぐって曖昧な態度が許されない事態に直面している。
 「国民投票法案」に最低投票率を定めないのは「国民の関心が薄い憲法改正においては最低基準に達しない可能性がある」と自民党憲法調査会の保岡興治会長が言い放った。「何が何でも九条改悪を」と国民を欺きつづける傲慢な姿勢にむらむらと闘志がわきあがる。
 憲法施行60年記念映画「日本の青空」を試写会で観た。すべてを忘れ、スクリーンに吸い込まれた2時間ちょっと。気がつけば会場いっぱいの人たちの共感と確信の拍手が波打った。あの戦争で肉親を何人も失った私の祖父や両親はどんな思いで憲法の施行を受け止めたのか---。映画をみながら、終戦時の祖父や両親の心の空洞が、平和憲法という「青空」につながって行くイメージが私の中でふくらんでいった。
続きを読む
posted by kin-ikyo at 11:57| Comment(0) | TrackBack(2) | 新刊・映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。