2009年07月09日

新刊紹介 堤 未果著 アメリカは変われるか? 立ち上がる市民たち

アメリカは変われるか?
チェンジはおこすもの

「アメリカ人の納める税金の4割が軍事費」「テロの恐怖心を植え付け統治する社会」 「教師が生徒を監視し、反抗的態度で警察に連行」など、あまり報道されることのないアメリカの現状は、ちょっとしたホラー小説より恐い。

これはアメリカだけの問題ではありません。政治家は 「北の脅威」 をあおって軍備増強を求め、小泉元首相に日本人が熱狂した状況とオバマヘの米国民の熱狂が妙に似ていることに気づかされます。

メディアが本質を伝えず、スローガンで作られていく世論に乗せられ、少数意見を消し去り、「無知」「無関心」「諦め」という一番の恐怖が浸透していく…。

他方で著者は、アメリカの現状に 「おかしい」 と気づいた市民の活動も紹介しています。9・11テロで家族を失った女性が憎しみを乗り越えてイラクに行き、戦争被害者の怒りを直接聞いて「報復より反戦を」と訴える姿など、本当の変化を求める米国民の存在に胸が熱くなります。

堤さんは 「私たち日本人も変化を待つのではなく、真実を武器に立ち上がり、変化を起こそう」と呼びかけます。タイトルは 「アメリカは変われるか?」 ですが、「日本は変われるか?」と問いかけられているように思いました。 (渋)(大月書店・1000円+税)

(北海道民医連新聞2009年6月25日号より)
ラベル:アメリカ 反戦
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2009年06月14日

新刊紹介 マルクスは生きている

マルクスは生きている 混迷から抜け出す道筋が

 マルクスについての本を読むのは、自慢じゃないけど初めて。そんな初学者をも引き込む力が本書にはあります。

 著者は日本共産党の議長だった不破哲三さん。マルクスの理論の骨格全体を分かりやすく? 説明し、その理論が現代にどう生きているかを解説してくれています。(?)は、正直、分からない所もあったから。

 第1章は 「唯物論の思想家・マルクス」。読んで 「僕も唯物論者だったのか!」と気づかされましたが、「弁証法」ってよく分からなかった。でも、「事物のなかにある矛盾や対立のなかに発展の生きた原動力を見るのが弁証法」 と説明されると「なるほど、医師・看護師不足や高い医療費などの矛盾があるから、その矛盾を解決しようと民医連も頑張っているんだよなぁ」と納得できたりもします。

 最も引き込まれたのは第2章「資本主義の病理学者マルクス」 でした。どうして一生懸命働いても暮らしが楽にならないのか、何で派遣労働者は使い捨てにされるのか、貧困と格差はどうして生まれ、経済危機はなぜ起きるのか、それらの疑問を、ストンと胸に落ちるように解明してくれました。しかもマルクスの言葉で! 第3章では社会主義に対するイメージがコロッと変わりました。マルクスって、すごい人です。(内)(平凡社新書・720円+税)

(北海道民医連新聞2009年6月11日号より)
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2009年06月08日

新刊紹介 ペシャワール会編
  アフガニスタンの大地とともに 伊藤和也 遺稿・追悼文集

アフガニスタンの大地とともに 一青年の遺した深い心

 今年2月23日報道されたNHKスペシャル 「菜の花畑の笑顔と銃弾」。そこに見たひとりの日本人青年の生き方に深く感動し、心を熱くした。

 伊藤和也さんは、2003年12月、内戦と大干ばつによって300万人の難民がさまようアフガニスタンで、当時ぺシャワール会が始めた「緑の大地計画」に参加した。約5年にわたり用水路建設や試験農場を担当する。しかし、昨年8月26日、銃弾に倒れ、31歳の短い人生を終えた。アフガンの村に溶けこみ、荒れ果てた大地で餓死と隣り合わせに生きる農民たちに胸を痛め、アフガンの人々と苦楽を共にし、黙々と誠実に働く姿に、多くの農民が信頼を寄せ、彼を愛した。

 草も生えない土地に少しずつ緑が広がり、サツマイモなど農作物も収穫できるようになった。「平和とは戦争以上の力であります。戦争以上の忍耐と努力が要ります。和也くんは、それを愚直なまでに守りました」。中村哲さん (医師、ペシャワール会代表) は語る。

 本書には、用水路建設、農作業の様子、そして緑が戻った大地で一面の菜の花畑を駆けめぐる子ども達の笑顔など、印象的な写真が数多く収められている。伊藤和也さんの遺稿と追悼文には、アフガニスタンの平和を願う人たちの思いが込められている。 (米)
(石風社・1500円+税)

(北海道民医連新聞 2009年5月28日号より)
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2009年04月26日

新刊紹介 長沼事件 平賀書簡 35年目の証言 福島重雄・大出良友・水島朝穂

長沼事件 平賀書簡歴史の空白を埋める

北海道・長沼町に航空自衛隊のミサイル基地を建設するため、農林大臣が国有保安林の指定を解除したことに対して住民が起こした訴訟が「長沼裁判」です。

1973年9月7日、一審の札幌地裁は国民の平和的生存権を認め、「自衛隊は憲法違反」と明確な審判を下しました。国家の軍隊が裁判所によって憲法違反とされたのです。福島重雄裁判長の名を取って 「福島判決」と呼ばれています。

この判決から35年。判決後メディアを避け続けてきた福島重雄さんが、ついに沈黙を破りました。水島朝穂さん(早大教授) のインタビューに答えて当時の心情を述べ、日記を公開しています(判決直後の日記には「あたりまえのことをあたりまえに判決しただけ」と記しています)。

名古屋高裁のイラク派兵違憲判決にたいして 「そんなの関係ねえ」と暴言を吐く自衛隊最高幹部。道理と憲法を押し潰して自衛隊を拡大しておきながら、「憲法が実態にそぐわない」と9条改憲を唱える論調に、本書は鋭く警鐘を鳴らしています。

「私はこのことについて沈黙を守り続けてきた。だがこの出来事は歴史の中に埋もれさせていいことだったとも思われない」。「刊行にあたって」 の福島重雄さんの言葉は重く、今後の司法のあり方を考える上で、大きな意味を持つ1冊です。(日本評論社・2700+税)

(北海道民医連新聞2009年4月23日号より)



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新刊紹介 共生経済が始まる 世界恐慌を生き抜く道 内橋克人

共生経済が始まる競争至上主義を越えて

私たちがついに実感することのなかった 「戦後最長の好景気」 とやらを謳歌したのは、ほんの一握りの大企業だけでした。

巨額の内部留保を蓄えながら、お題目のように国際競争力を叫んで労働者から強欲に搾り取り、景気が悪化すると一刻を争うように首切りに狂奔しました。「企業が潤えば貧しい者が底上げされる」というへ理屈は完全に打ち砕かれました。

市場原理主義に警笛を鳴らしてきた内橋克人氏は、「『競争』と『切磋琢磨』は同じではありません。いまもてはやされる『競争』とは、勝ち組・負け組のふるい分け、格差社会を必然とするむき出しの競争主義に社会を任せるという流儀です」 と指摘し、新自由主義の 「自由」 は大企業が私たちの生活を脅かす 「自由」であり、退場の時を迎えていると断罪しています。

経済危機の今こそ、「働いても豊かになれない日本」がどのようにつくられてきたのかを振り返る大切さを感じます。再生の道筋が本書で明瞭に示されている訳ではありませんが、農業政策や介護事業で成功している日本の自治体や、デンマークの浪費なき成長の事例など、競争万能の社会ではなく、連帯・参加・協同を原理とする 「共生セクター」 の復権こそ、「目指すべき経済」に他ならないという主張は、傾聴に値します。(渋)(朝日新聞社・1500円十税)

北海道民医連新聞 2009年4月9日号より
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2009年03月20日

新刊紹介 多喜二の視点から見た 身体 地域 教育

多喜二の視点から見た 身体 地域 教育
2008年オックスフォード小林多喜二記念シンポジウム論文集

時空を貫き多様な領域へ

昨年9月16日から18日まで、オックスフォード小林多喜二記念シンポジウムが開催されました。オーストラリア、ノルウェー、イギリス、日本、アメリカ、カナダ、中国、韓国の33人が発表し、本書には、そのうち 「現在の多喜二研究の水準を示し、さらに今後の研究方向を予測させる」 23編を収載しています。

一読、多喜二の受容と研究の広がりに目を見張ります。「蟹工船」 をはじめ、「安子」 「不在地主」 「健」「救援ニュースNo.18附録」「暴風警戒報」 などの研究を通して、貧困、暴力、買売春、ジェンダー、グローバリズム、連帯、決起への呼びかけなど、多喜二が提起した諸問題の現代性を浮き彫りにしています。

小樽多喜二祭にも参加した同シンポジウムコーディネーターのヘザー・ボーウエン=ストライクさんは、多喜二への関心は 「単なる学問的関心という以上に、私たち自身が生きる世界のより公正な在り方への切望を惹起するもの」 と評しています。荻野富士夫、小森陽一、北村隆志氏らの発表は説得力があり、多喜二と村上春樹、松本清張、宮崎駿を関連づけた興味深い研究もあります。多喜二ファンならずとも、挑戦してみたい一冊です。 (丁)
(発行=小樽商科大学出版会、発売=紀伊国屋書店、2000円+税)


(北海道民医連新聞2009年3月12日号より)
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新刊紹介 若者のための政治マニュアル 山口二郎著

若者のための政治マニュアル
無責任でいいじゃないか

「努力したら報われる」と言うけれど、みんな頑張っているのに、生活は楽になりません。「自己責任」の行き着く果てが今の悲惨な状況です。もっとわがままになって 「分け前よこせ」 って言えばいい。過剰な権利の主張などなく、行使も請求もしない権利は黙殺されてしまうと著者は若者たちを叱咤します。

「無責任でいいじゃないか」 「本当の敵を見つけよう、仲間内のいがみ合いをすれば喜ぶ奴が必ずいる」「当たり前のことを疑え」など、自分のためになる心構えを10のルールで説いています。

失業や病気など、誰にでも起こりうるリスクを一人で抱え込まずに、全体で分散する方が住みやすい社会という指摘はなるほど。リスクを個人の責任に置き換えてきたこれまでの政治の仕組みを厳しく批判し、一時の雰囲気やステレオタイプに依存しない物の見方、考え方を提示します。

解雇されて将来の展望を見失い、自分を責めている人に 「あなたが悪いんじゃない。社会の仕組みの欠陥を直すよう、ちょっと力を合わせましょう」 とメッセージを伝え、より良く生きるイメージを膨らませる内容です。「若者に向けて」ということですが、どの世代にも読んでほしい。「若者は甘えている」「失業や貧困は自己責任」 と言っている人の枕もとにも、そっと置きたい1冊です。 (渋)

(講談社現代新書・720円+税)


(北海道民医連新聞2009年2月26日号より)
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2009年02月08日

新刊紹介 貧困にあえぐ国ニッポン 貧困をなくした国スウェーデン 竹崎 孜 著

貧困にあえぐ国ニッポン 貧困をなくした国スウェーデン
大きな政府が支持される理由

「福祉大国」スウェーデンも、かつてはアメリカなどへ大量に移民を送り出す貧しい農業国でした。そこからはい上がった原動力は、貧困根絶と「生活再生」を最優先にした政治の力でした。富や所得の配分を最重点にした「公的責任主義」を採用し、政策的には仕事=雇用、教育、住居を重点に、そこからこぼれる人たちの福祉対策を総合的にすすめてきました。

スウェーデン人で貯金をする人はほとんど無く、国民は自分の財布と政府に預けた財布の 「二つの財布」を持っています。したがって、税金の使い方=政治の動向に無関心ではいられない仕組みです。

公務員が労働人口の約3分の1を占め、大きな政府「生活大国」を担っています。しかも経済は停滞せず、大きな税負担も国民還元率が高く、安心生活を保障しています。

一昨年秋に北大の山口二郎、宮本太郎氏らが行った「日本人が望む社会経済システム」に関する世論調査では、「北欧型」を6割近くが望んでいながら、同時に「小さな政府」も望むという結果が示されました。

格差・貧困を政策的につくり出してきた日本の政治に対する国民の不信は頂点に達しています。スウェーデンモデルを日本に当てはめることは容易ではありませんが、現状の打開に向けて多くの示唆を得ることが出来ます。(S) (あけび書房・1600円+税)

(北海道民医連新聞 2009年1月22日号より)
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2008年12月31日

新刊紹介 落馬脳挫傷 石山衣織

落馬脳挫傷 
騎手の妻が語る再生の物語


 2007年2月24日正午、病棟詰所の電話が鳴った。「息子の繁が、レース中に落馬して病院に運ばれた。意識不明の重体のようだ」。石山孝子さんの震える声だった。落馬した石山繁さんの母、孝子さんは、私たちの病棟の看護師である。

 その後、石山さんから時折電話が入り、涙をこらえながらも気丈に息子さんの経過を報告してくれた。繁さんの妻、衣織さんが綴ったこの本を読んでいて、ああ、この時期の事だったのだ、こんな風に家族で繁さんを見守り、皆で支え合っていたのだと感じる場面がいくつもあった。ありのままの飾らない文章に共感するところもあれば、私ならこんなに強くはなれないだろうと思うこともあった。

 何より子どもたちの父親への対応に脱帽である。思いやり、苦しくならないための発想など、多くの患者さんと接している私でもかなわないと思わされた。

 高次脳機能障害と一言でいってもダメージを受けた部位や程度で症状が微妙に異なり、その対応はケースバイケースで、ぴったりとくるテキストはなかなかないのではないだろうか。この本は、今苦しんでいる本人や家族、医療者にとって大変参考となる。石山家の大事な宝物になったとも思う。皆さんにも一読をお勧めしたい1冊だ。(武井寛子・函館稜北病院3病棟師長)
(エンタープレイン・1900円+税)

(北海道民医連新聞2008年12月11日号より)

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2008年12月25日

新刊紹介 加藤周一が語る 聞き手・小森陽一

加藤周一が語る
現在の政治状況を明晰に整理

 書名の通り、九条の会呼びかけ人の1人である評論家の加藤周一氏が、小森陽一さん(九条の会事務局長、東大教授) を聞き役にして語ったブックレットです。昨年12月と今年4月の2回にわたる対談を九条の会がまとめて、24日に開催された第3回交流集会にあわせて刊行されました。
 
 テーマは2つ。「憲法九条から日本と世界が見えてくる」「戦争は、どのようにして始まるのか」。かつて日本が歩んだ戦争への道を 「教訓化」 して、現在の政治状況 (2人の首相が相次いで政権を放り出したり、自民・民主の大連立、小沢一郎という政治家をどう見るかなど) を見通しています。

 対談中、小森さんは 「十分伝わりましたでしょうか。非常に大事な問題点の整理があったと思います」「今かなり突っ込んだ大事なお話がなされたように、私は受けとめました」 と、何度も強調しています。小森陽一さんをして、こう言わしめる加藤周一さんの思索の深さに、今さらながらに圧倒されます。

 全編60ページ足らずの薄手のブックレットなのに、そこには「どこかで読んだことがある」話ではなく、「ハッとさせられる」話が詰まっていて、ずっしりと読み応えのある1冊です。(晃)
(九条の会・頒価300円)

(北海道民医連新聞2008年11月27日号より)
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2008年12月04日

新刊紹介 最後の流儀 種山千邦 著

最後の流儀
 生き方と逝き方に向き合う

 麻酔科医である著者はアメリカ留学中の妻の病気を機に、ガン末期患者の訪問看護と在宅緩和ケアを体験しました。帰国後、郷里(長野県塩尻市) にペインクリニックを開設し、在宅の終末期緩和ケアをはじめました。医師であった父親を含め、14年間で看取った42人の事例から在宅緩和ケアの現状と問題点、今後の課題を提起しています。
 
 介護保険制度の開始で、かえって施設死が増加しました。著者は、主に経営的理由で訪問看護ステーションを閉鎖しなければなりませんでした。また、家族介護の負担の大きさなど制度を是正しなければ在宅緩和ケアを続けられないと指摘します。依頼する医師と受ける医師の悩み、医師と看護師の意思疎通など、地域ネットワーク充実への課題も記しています。

 「どんな痛みもモルヒネを上手に使うことで取ることが出来る」 のに、多くのガン末期患者が痛みに苦しんでいる現実に対し、著者は患者側だけでなく、医師の偏見や誤解をとくことも大切だと指摘しています。この分野の課題は、求められていることに比してまだまだ端緒なのかとの思いを持ちました。ホスピス病棟や在宅支援診療所の医師や仲間の努力を称えつつ、著者の体験を活かしたいと痛感します。(S) (信濃毎日新聞社 1500円+税)
 (北海道民医連新聞 2008年11月13日号より)

関連情報
著者のホームページにある書籍紹介
http://www.taneyama-iin.jp/book.html
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2008年10月31日

新刊紹介 買物難民 杉田聡著

 車社会、郊外型大型スーパーの席巻で、かつて人々に親しまれた商店街が次々に姿を消しています。車を持たない高齢者にとって住みづらい街があちこちに広がり、「買物難民」が社会問題化しています。
 こんな状態に不安を抱いている人が増えています。とりわけ高齢者の暮らしを支えているヘルパーをはじめ介護関係の職員にとっては、日々切実な問題です。

 著者は帯広畜産大学の教授で、4年半もの期間を費やして4回の全国調査と、各地に足を運んでの実態把握を行い、打開策の提言までまとめています。全国20カ所の調査地には釧路市、上砂川町も含まれます。札幌の 「移動コンビニ」 も紹介されており、大都市の買い物問題まで広い視野で書かれています。

 生協などの宅配サービスや商店街の移送サービス、移動販売車から商店の誘致運動まで、様々な取り組みを紹介しながら、社会資本としての「商店街」、大型店やコンビニヘの改善提案、そして町内会やバス会社、タクシー会社への要望など難民対策への貴重な提言がなされています。

 共同組織とともに高齢者の生活支援、まちづくりに取り組む私たちにとって、新しい活動への意欲がみるみる高まる良書です。(S)(大月書店・1600円+税)

(北海道民医連新聞2008年10月23日号より)
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2008年10月12日

新刊紹介 わが夕張わがエトロフ 佐々木譲著

わが夕張わがエトロフ
 故郷への熱い思いを

 夕張で生まれ、中標津に仕事場を持つ作家、佐々木譲さんの初めてのルポ・エッセイ集です。父親はエトロフ島出身。祖父が出資した水産会社に勤務していたときに徴兵され、戦後戻るべき島をソ連に奪われ、三菱大夕張炭坑で働きます。そこで樺太から引き揚げ、夕張に職を得た母親との間に譲さんが生まれます。ふるさと夕張が国の見せしめ政策で 「財政再建団体」 になり、「市民の暮らしがしめあげられ、生きるすべがなくなる…」。自らを 「難民2世」 と言う著者は、いたたまれない気持ちで夕張再生のため力を尽したいと強い思いを伝えています。
 
 ソ連崩壊の直前、遙かな故郷エトロフに渡ったときのルポは圧巻です。06年のビザ無し訪問の体験も 「千島っ子」 の共存に向けての熱い思いが伝わります。島の子どもたちに 「昔、ソ連が薬を援助したとき映画が作られたって本当ですか」と質問されたという下りでは 「ドキリ」 としました。国民的な大闘争で小児マヒの生ワクチンをソ連から輸入させ、大流行を終息させた先輩たちの運動が、島の子どもたちにしっかり伝えられていたのです。

 中標津での地域の人たちとの豊かな暮らしぶりが心地よく、北海道への熱い思いが伝わる1冊です。(S)(北海道新聞社・1500+税)

(北海道民医連新聞2008年10月09日号より)
ラベル:夕張 エトロフ
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2008年10月10日

新刊紹介 GNH もうひとつの<豊かさ>へ、10人の提案 辻信一編著

GNHもうひとつの豊かさへ
豊かさ」のヒントが満載

 大量生産、大量消費社会の弊害があまりにも明らかになり、その反省から、マイ箸とエコバッグを持ち歩き、自転車通勤、自然食志向、将来は農民的な暮らしにあこがれる、という風潮もみられます。しかし 「GNPがマイナスに」 と聞くと何となく心配になる、それほど経済成長一本槍社会の 「常識」 に囚われているのが私たちです。

 この本は国の豊かさをGNP(国民総生産)、つまり商品としてやりとりしたモノやサービスの総量とその金額を目安とする考え方をやめて、GNH、Hは幸せのハピネス (国民総福祉)とすることを呼びかけ、そのための考え方や指標を内外10人の学者、運動家が提案しています。

 GNHを最初に呼びかけたのは30年以上前のヒマラヤの小国、ブータン。05年の国勢調査で、国民の97%が 「幸せです」 と答え、世界の注目を集めました。

 地球の危機に、世界も日本も変わらなければなりません。もちろん私たちも暮らしを見つめ直して未来を築かなくてはなりません。そのためのヒントが満載です。すべてが大学での講演録で読みやすさ抜群です。次回のサミットはGNHの主要国首脳に集まってもらって、世界に発信してほしいものです。 (S)(大月書店・1800円+税)

(北海道民医連新聞2008-09-25号より)
ラベル:GNH 国民総福祉
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映画紹介 イントゥ・ザ・ワイルド

IntoThe Wild

人生の意味を問いかける


 荒野をめぐり、荒波にもまれ、最低限の物しか持たず、アラスカに向かう2年間。学歴社会や、拝金主義を否定し、親が敷いた人生のレールに抵抗し、真に生きる意味を見つけようとする青年の純粋さが胸に迫るアメリカ映画です。ショーン・ペン監督。

 1990年、ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業し、将来を嘱望されたクリストファー(エミール・ハーシュ)は両親と妹に何も告げずに旅立ちます。貯金の全てを慈善団体に寄付し、クレジットカードもお金も燃やし、ひたすらアラスカの荒野を目指します。

 この映画、観る前から気になっていました。原作は登山家でもあるジョン・クラカワーのノンフィクション小説「荒野へ」。実在した青年の心の軌跡と謎にみちた死の真相に迫った著書を9年前に読み、心揺さぶられたことを思い出します。

 クリストファーは南部から西部、西部から中西部、メキシコ国境へ、トラックに便乗し、カヌーで川を下り、貨物列車に飛び乗ったりしながら旅を続けます。その途中でさまざまな既成の価値観に囚われない人々との出会いが、クリスをどんなに励まし、安らぎを与えたことか。

 フラッシュバックで、クリスの生い立ちや家庭不和のストーリーが盛り込まれ、彼の反抗の意味と怒りの深さを知ります。

 1992年5月、わずかな米と狩猟用のライフルを肩に掛け、クリスはアラスカの山岳地帯に辿りつきます。目の前には雪を抱いたマッキンレー山脈。偶然空き地に捨てられていたバスを見つけ、そこをねぐらに小動物を狩猟し、植物を採取し、叡智の限りを尽くして生き抜こうとする姿は壮絶ですらあります。

 ソローやトルストイを愛読したクリスは 「人生の幸福は誰かと分かち合った時にこそ実感できる」 と、ノートに書き記します。最期のフレーズは 「僕の一生は幸せだった。ありがとう。皆さんに神のご加護がありますように」。

 18キロも減量して餓死寸前の場面の撮影に臨んだエミール・ハーシュの、自然や人と真剣に向き合う瑞々しい演技が感動的です。(樋口みな子)

(北海道民医連新聞2008年9月25日号より)

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2008年09月26日

新刊紹介 人が壊れてゆく職場 笹山尚人著

人が壊れてゆく職場

 「理不尽」に抗する知恵

 著者は働く者の立場に立って労働事件を取り扱う弁護士です。この本では一方的な賃金カット、いじめとパワハラ、解雇や 「雇い止め」、パート・アルバイトの権利など7つの難題と格闘した経過をわかりやすく説明して、働く人自身が自分を守るために 「理不尽」 に立ち向かう知恵と勇気、労働法の活用や労働組合の役割を解き明かしています。

 働く者にとって 「まともな職場」 がなく、非正規雇用が広がる中、著者は「『こんな社会』で働いて生きてゆく以上、自分の心身を守り、自分や家族の生活を豊かにしてゆくことは、自分で考え実践しなければならないこともまた確実だ」 と「弱い立場の労働者」にエー ルを送っています。今年3月に施行された労働契約法や06年から施行された労働審判の活用など 「法律を守らない使用者」 に迫るノウハウも紹介されており、身近の若者の事例にぴったりの実践例もあります。

 私たちが 「生活と労働」に根ざす医療活動をすすめる上で、医療や介護の相談には対応できても、働く人の職場の問題にまではなかなか対応出来ていないのが現状です。この本からヒントを得て 「法律を守らない職場」を無くし、「明るく働くことが出来る職場」に接近する、視野を広げた医療活動が出来ればとの思いを強くしました。 (S)(光文社・760円+税)

(北海道民医連新聞 2008年9月11日号より)
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2008年09月23日

映画紹介 闇の子供たち

映画 闇の子供たち

 タイの子供の人身売買を追い、幼児売春、臓器売買のショッキングな現実に迫った社会派作品です。原作は梁石目「闇の子供たち」。

 バンコク駐在の新聞記者南部(江口洋介) は、日本の子供がタイで密かに心臓移植手術を受けるというので調査を開始します。

 大学で福祉を学んだ音羽恵子(宮崎あおい) がタイの社会福祉センターにボランティアとして参加。貧しくて学校に行けない子供たちが字を学んだり、遊んだりできる施設ですが、少女の姿が数日来見えません。新聞記者の南部、音羽、それにちょっと頼りないカメラマン与田 (妻夫木聡) が少女の行方を追ううちに、タイの子供たちがマフィアに監禁され、売春させられている事を知ります。この場面がショッキング。幼児買春のむごたらしさ、おぞましさに思わず目を背けてしまいました。客の中には日本人もいます。

 少女たちはエイズになればゴミのように捨てられます。エイズになった少女がゴミ袋から必死に逃げ出して我が家にたどり着き、屋外の木の檻で息絶えるシーンに胸がふさがりました。

 南部と音羽は臓器移植手術を受ける子供の父親(佐藤浩市)に東京まで会いに行きます。音羽は、タイの生きた子供からの心臓移植手術は止めてと訴えます。

 南部と与田は病院前で張り込み、心臓移植される子供、移植する子供を見つめます。音羽もマフィアの暴力に敢然と立ち向かい、児童施設から消えた少女を救出する場面などハラハラさせられます。なすすべもなく大人のおもちゃにされる子供たちの眼差しがいつまでも心に残ります。

 映画は子供の命の尊さを守ろうとする光と、子供を売買する闇との葛藤を描き、貧富の格差による厳しい現実を捉えています。闇の子供たちを救うには何が出来るのだろうか? と深く考えさせられました。(樋口みな子)

(北海道民医連新聞2008年8月28日号より)
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2008年09月19日

新刊紹介 軋む社会 教育・仕事・若者の現在 本田由紀著

軋む社会
「絶望から希望へ」の糸口探る

 「夢を持てない。将来の展望が見えない。希望が見いだせない。そんな若者の声が聞こえる。こんな社会に誰がしたのか?」

 ギシギシと若者の心身を軋ませる社会の構造に、「教育・仕事・家庭」の三領域にまたがる研究をしている新進気鋭の教育社会学者、本田由紀氏がせまり、打開を呼びかけています。

 学校にも家庭にもいろんな問題が潜んでいますが、若者が生きにくくされている根本には、仕事の世界における「働かされ方」の変化があるとし、企業の動向と国の対応が、若者の軋みを増幅している構造を解き明かします。

 「豊富な知識」と「協調性」など客観評価できる規準で採用され、昇進した従来の「能力」に対し、今日では「人間的魅力」にあふれ、「不断のパフォーマンスで能力を永続発揮」する超能力主義がもてはやされています。いつもポジティブ、趣味は仕事とかっこよく振る舞うワーカーホリックな若者がいる半面、努力不足や自己責任の脅迫で引きこもりや自暴自棄になる若者も少なくありません。

 著者の「柔軟な専門性」を身につける教育改革への提言は重要です。終章「いま、若い人たちへ」は、若者をはじめ大人たち、親たちの心をも揺さぶる力を持っています。   (誠) (双風舎・1800円+税)

(北海道民医連新聞 2008年8月28日号より)
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2008年08月22日

新刊紹介 消費税で福祉国家になれる? 消費税をなくす全国の会編

消費税で福祉国家になれる?
消費税は国家的貧困ビジネス

 「高齢化社会を支えるために」と消費税が導入されて、来年4月で20年を迎えます。消費税がなかった時代を知らない人も増えました。最近、「消費税を引き上げないなどと主張するのは無責任」という論調が、国会やマスコミでも主流を占めています。そうした中で「消費税をなくす全国の会」が今年4月に行ったシンポジウムでの各氏の発言をまとめて、ブックレットとして発行しました。

 発言者の一人である、反貧困ネットワーク事務局長・湯浅誠さんの指摘は明快です。「消費税は国家的貧困ビジネスである。貧困を国家が固定化させるのが消費税」「消費税を上げるか、社会保障を削るか、という二者択一をいかに越えられるか。それを自分たちの仲間内から出て、一般の人たちにどれだけ説得できるかにかかっている」。

 発言者は、「年金大崩壊」で講談社ノンフィクション賞を受賞したジャーナリストの岩瀬達哉さん、「豊かさとは何か」の著者、暉峻淑子さん(埼玉大名誉教授)、国民医療研究所所長の日野秀逸さん、「なくす会」に20年間かかわってきた弁護士の増本一彦さん。その一人ひとりの発言が簡潔にまとめられ、秋のたたかいをすすめるための学習資料としても最適です。(た)
(かもがわブックレット・600円+税)

(北海道民医連新聞2008年8月14日)


ラベル:消費税
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2008年08月05日

新刊紹介 戦争への想像力 小森陽一監修

戦争への想像力

伝え合う声の「響鳴」

 本誌に登場する9人はいずれも1970年代、80年代生まれの青年。彼女・彼らは、「たまたま」出会ってしまった戦争体験者にたいして、その後、自らすすんで証言を聞き取り、対話し、自分自身の記憶として取り込み、消化し、自分が納得した方法で同世代の仲間たちに伝えようと懸命の努力をしています。

 荒川美智代さんはNHK「従軍慰安婦」番組改ざん問題のニュースをネットで見ていて、そこにリンクされていた「中国帰還者連絡会」の存在を知り、元兵士の証言を記録に残す活動に加わるようになりました。ふだんは派遣労働者です。

 本書では、「従軍慰安婦」をはじめ、「南京事件」「強制連行」「靖国神社」「イラク戦争」「東京大空襲」「沖縄戦」「原爆」「朝鮮戦争」の体験を語りつごうとする9人の思いと日常生活がつづられています。また、小森陽一さん(九条の会事務局長)との座談会を通じて「なぜ今、私だちなのか」を掘り下げています。

 「他者の心の傷を、どのようにして人として受けとめ、自らの心の傷として引き受けつつ、共に治癒させていくかという方向をめぐる、深い探求の軌跡を、九人の記録から読みとることができ」(小森氏)ます。これまでにない試みの1冊といえます。(た)(新日本出版社・1600円+税)

(北海道民医連新聞2008年7月24日号より)
ラベル:戦争体験
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