
悪化するまで症状が出ない恐ろしい病気
日本人の死因の第1位はがんですが、第2位、第3位の心疾患、脳血管疾患をあわせるとがんと同じくらいの人が亡くなっています。その心疾患や脳血管疾患の原因の多くが動脈硬化といわれています。
動脈硬化には、さまざまな病気や生活習慣などが関係していますが、脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化ともっとも関係の深い病気のひとつです
■動脈硬化とは
「動脈硬化」と聞くと血管そのものが硬くなるというイメージをもたれると思いますが、実際はただ硬くなるというよりは、血管の壁が厚くなり、血液の流れる内腔が狭くなることを示しています。
いくつかパターンはありますが、もっとも重要なのは、血管の壁の中に脂がたまってコブ(プラーク)ができ、それが血管を狭める動脈硬化です。
■動脈硬化が起こると
では動脈硬化が起こるとどんな症状が出るのでしょうか? 答えは「ほとんど症状はない」です。動脈硬化は初期の段階では全く症状はなく、狭窄がひどくなって、血流が悪くならない限り症状はでません。ですからかなり進行するまで見つからないことが多いのです。
動脈硬化が進行して血流が悪くなってくると、その先の臓器に十分血液が届かず、血流不足による症状が出てきます。たとえば、心臓の血管なら狭心症、脳の血管なら「一時的な脳梗塞」といわれる一過性脳虚血発作です。また、コプを覆う膜が破れると、そこで血液が固まって突然血管をふさいでしまうことがあります。そうなるとその先にある臓器に大きな障害を与えます。たとえば、脳への血管が詰まれば脳梗塞、心臓を養う冠動脈が詰まれば心筋梗塞となります。これらは起こしてしまうと命に関わることがあり、助かっても重い後遺症を残すことがある病気ですので、起こさないように予防することが大切です。言い換えれば、動脈硬化を起こす原因を減らすことがとても重要なのです。
■動脈硬化の原因
ではその動脈硬化の原因とは何でしょうか? 高血圧、糖尿病、喫煙などいくつかありますが、今回はその中から脂質異常症についてお話したいと思います。
「脂質異常症」とは最近の呼び名で、以前は「高脂血症」と呼んでいました。血液中の脂の量に異常をきたす病気です。
一言で「脂」といってもいくつか種類があり、動脈硬化に最も深くかかわるのが「コレステロール」です。このうち肝臓から全身に向かって運ばれているものを「LDLコレステロール」と呼びます。別名「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、これが増えると血管の壁にコレステロールが入り込み、動脈硬化を起こします。反対に全身から肝臓に運ばれているのが「HDLコレステロール」で、「善玉コレステロール」とも呼ばれ、こちらは減ってしまうと動脈硬化を起こしやすくなります。LDLコレステロールや中性脂肪が多い状態、あるいはHDLコレステロールが少ない状態を「脂質異常症」といいます。
■脂質異常症になると
脂質異常症になると、どんな症状がでるでしょうか? 実は脂質異常症に症状はありません。したがって、健康診断などで脂質を調べる目的で血液検査をしないと見つかりません。平成18年の厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、脂質異常症の疑いのある人は全国民の3人に1人以上(約4000万人) にもなるそうです。
この新聞を読んでいる友の会員の皆さん、最近健康診断受けましたか?実は脂質異常症かもしれませんよ。
脂質異常症は生活習慣病の一つに数えられていますが、生活習慣が良ければならないという病気ではありません。痩せていても、健康的な食事・運動をしていても脂質異常症になることがあります。遺伝性の脂質異常症もあるからです。
「自分は大丈夫」とは思ずに、まずは健康診断で脂質異常症があるかを調べてみましょう。それがあなたの生命や人生を狂わす可能性のある脳梗塞、心筋梗塞の予防につながっていくのです。

(北海道勤医協友の会新聞2010年3月1日号より)