
2008年9月、リーマン・ブラザーズが破錠。多くの米国市民が住宅ローンを払えなくなり、銀行に家を差し押さえられます。映画は、何台ものパトカーを連ねてやって来た保安官が家のドアを破って立ち退きの強制執行をする衝撃的な場面から始まります。
差し押さえられた家の前で泣きながら家具を燃やす夫婦。突然解雇されて路頭に迷う労働者たち。受取人を会社にした生命保険を社員にかけ、社員が死ぬと保険金を全部会社が手に入れた事を知って妻や家族が怒る一幕など、まるで今日本で起きていることを見せつけられているようです。
資本主義が暴走し始めたのは、レーガンが大統領になり、弱肉強食の新自由主義がウォール街を支配するようになってからだと、ムーア監督はスピーディーな映像で畳みかけるように訴えます。1%の富裕層のために減税と規制緩和を進め、多くの人たちは懸命に働いても貧しい暮らしを余儀なくされています。
現在アメリカの失業率は10%に達します。資本主義は合法化された強欲なシステムだというメッセージが全編を貫き、この不公平なシステムをただしたいという熱い思いと怒りが伝わってきます。
突然工場を解雇された労働者たちが団結して、全国的な支援を受けて銀行から解決金を勝ち取る闘いも描かれます。立ち退かされた住宅の封鎖を地域住民が解除した闘いもあります。泣き寝入りする市民ばかりではありません。
弱い人たちへの共感と慈愛にあふれ、民主主義ってこういうことなんだと胸にストンと落ちました。
深刻なテーマですが怒りをユーモアにかえて描かれています。経済の仕組みがさまぎまな事例を通して理解できます。政治に無関心であってはならないと思いました。若い世代の人達にこそ観てもらいたい映画です。
樋口みな子
(北海道民医連新聞 2010年1月28日号より)