2009年12月04日

認知症・胃がん末期を支えた家族から学んだこと

看護現場からの発信
勤医協苫小牧病院外来スタッフ

苫小牧病院では、月約60件の往診を行っています。そのほとんどが80歳以上の高齢者で、自宅で最期を迎える患者さんも少なくありません。私たちは昨年、往診患者でありアルツハイマー型認知症で胃がん末期と宣告され、自宅で最期を迎える事を選択した家族とのかかわりを紹介します。

M氏(60歳代・男性) の認知症は、5歳児と同じレベルでした。とにかく歩くことに執着し、何十キロも早足で歩き、時には帰宅できなくなり警察に保護されることもありました。目離しのできないM氏を妻は、「認知症にしてもがんにしても、なぜもっと早く気付いてあげられなかったのだろう」 と自分を責め続けていました。デイサービスの勧めに対して 「デイサービスに追いやって自分が楽をしようとしていると思うのでは」 と悩み、不安でこっそり見に行き、みんなの輪の中で楽しんでいるM氏の姿を見てやっと安心していました。

M氏の予後が1年と告知されたとき妻は、「好きなことをさせてあげたい」 と、歌うことが好きだったので近所のカラオケへ一緒に行くなど、M氏との残された時間を悩みながらも楽しく過ごせるようにしていました。

終末期、M氏の意識が薄れる中「何もしてやれない、見ているのが辛い」「病院だったら何か違う事ができるかなと思って」 と入院を一時希望しましたが、自宅での最期を選択し妻と娘2人は、M氏のかたわらを片時も離れず最期の夜を過ごしました。

後日、ご自宅を訪問すると妻は、「夫の兄弟から、家で最期まで看てくれてありがとうと言われた」「やっと夫の写真を落ち着いて見られる様になった。自分でも本当に良かったと思っている」 と、後悔の言葉は一切聞かれませんでした。

私たちはM氏の家族を通して、がんの告知・治療・療養生活の全過程で様ざまな感情を抱き、常に揺れ動きながら患者に代わって選択を迫られ決断してゆく家族の想いを理解できました。同時に 「身近な存在として医療者がいる」重要さも学びました。

私たちは 「今家族に起こっている問題は何か」「それによる家族の想い」 を聞き取る中で、家族間のこれまでの生活の歴史、相互のつながりを知り、家族の苦悩・迷いを認識し、家族それぞれの代弁者として、家族間をサポートすることの重要性を学ぶことができました。これからも、看護師集団として成長していきたいと思っています。 (勤医協苫小牧病院看護師 大西 敦子)

 (勤医協新聞2009年11月11日号より)
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