2008年10月07日

一瞬の笑顔に励まされて
  勤医協西区病院5病棟の実践より

看護現場からの発信
看護現場からの発信 一瞬の笑顔に励まされて
勤医協新聞2008年9月11日号より。


 Aさん(83歳・男性)は今年の始め、診療所から当病棟に入院してこられました。専門的な治療が必要なため他院へ転院して一命を取り留めましたが、終末期の状態で再び当病棟に入院されました。「またよろしくお願いします」と声を掛けると、Aさんは手を合わせ、頭を下げられました。
 
 気管にチューブを入れていても短時間であれば会話も可能でしたが、すぐに呼吸が苦しくなるため、ほとんど筆談でコミュニケーションをとっていました。娘さんは遠方で仕事をしながらも時間をつくりお見舞いに来てくれていました。

 病態が日々悪化する中でも、ご本人からは 「家に帰りたい」 という言葉が聞かれていました。

 「娘さんの負担を減らしながら、何とかAさんの思いに応えられないか」、チームで話し合いを重ねていきました。その結果、短時間でも家に帰ることを娘さんとも確認することができました。
 
 しかしその頃には病態は悪化、痰の量が増えたり、呼吸苦のため寝たり起きたりを繰り返すようになっていました。Aさんの思いに変わりはないか再び尋ねると、「帰りたい」と頷き、その思いはとても強いことが確認できました。

 病状が日々悪くなっていることに不安を感じながらも準備を進め、福祉タクシーに酸素、吸入器、吸痰セット、点滴、万が一の悪化に備えての準備も行い、娘さんと看護師2人が付き添い、1時間かけて自宅まで帰ることができました。

 道中、何度も吸痰しながらも無事に到着することができました。自宅ではAさん専用のベッドが準備され、お孫さんや親戚の方が暖かく迎えてくれました。自宅に着くとAさんは安心されたのか、痰も落ちつき表情も和らいでいました。それまでは不安が強かったのだろうと感じました。

 車椅子に乗ったAさんは、長年手を掛けてきた広い庭をしばらく眺め、1時間ほど過ごしました。言葉は出せないけれど自分の家や庭、家族に囲まれてほんの一瞬、笑顔が見られました。

 病院に戻ったAさんは、数日後静かに息を引き取りました。
 
 最後にAさんの笑顔に接することができて本当によかったと思います。この事例から、病態の進行とともに変化していく患者さんとご家族の思いに寄り添い、チームで看護ケアしていくことの重要性を改めて学びました。これからも一人ひとりの患者さん、そして家族との関わりを大切にする看護をしていきたいと思います。Aさんとご家族に心から感謝致します。

(今村友香)

勤医協新聞2008年9月11日号より
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