2010年02月07日

健康ウォッチ 認知症との付き合い方と予防法

塩川 哲男

年をとってからの心配事で大きいのは「寝たきりになったら」と「ボケてしまったら」ではないでしょうか?介護保険ができて間もなく10年になりますが、「ボケても安心な社会」にはまだなっていません。現在、認知症の患者は200万人といわれ、今後も増え続けていくことは確実です。ここでは認知症のおさらいと、付き合い方、予防法などについて考えてみましょう。

■認知症とその原因

「痴呆」から「認知症」と呼び方が変わって5年、認知症という名称は広く知られるようになりました。

健康相談会などでは、「認知症とアルツハイマーはどう違うの?」 という質問がよく聞かれます。

認知症は、「いったん正常に発達した知能が、大脳の器質的病変により進行性に低下する状態」と定義されますが、認知症の原因疾患として最も多いのが「アルツハイマー型認知症(またはアルツハイマー病)なのです。つづいて血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などが主な認知症です。頻度は少ないものの忘れてはならない原因として、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症といった外科的な疾患、エイズや梅毒などの感染症があります。

■診断

認知症と診断するためには、先にのべた定義にあてはまり、かつ家庭あるいは社会生活上、何らかの支障を来しているかどうかが重要です。診断には家族からの情報が欠かせません。

鑑別すべき状態として、生理的物忘れ、うつ病、意識障害(せん妄)などがあり、問診、心理学的検査(長谷川式スケールなど)、画像検査(CTまたはMRI)などにより総合的に診断します。

■治療とケア

アルツハイマー病の中核症状(記憶障害、判断力低下など) に対する薬としてはアリセプト(R)のみが保険適用になっており、認知障害の進行を遅らせることが期待できますが、治癒や進行を停止させることはできません。

周辺症状(徘徊、暴力などの行動異常や抑うつ、妄想などの心理症状。総称して最近はBPSDということが多い)に対しては、向精神薬や抑肝散(よくかんざい)という漢方薬がしばしば有効です。昔の思い出などを語ってもらう回想法によって情動の安定効果がみられることもあります。

同時に介護者の多くは疲労し、うつ的になることや虐待を防ぐためにも、介護負担の軽減をはかるための具体的な処置(デイケアやショートステイの利用)が必要なことも少なくありません。認知症ケアにおいては、その人を中心としたケア (パーソン・センタード・ケア)や共感して接する(バリデーション) といったそれぞれの状態に合わせた個別的ケアが有効と認められつつあります。

■認知症は予防できる?

アルツハイマー病のワクチン療法が研究されていますが、今のところは、残念ながらまだ答えは「ノー」です。しかし、どういう人が認知症になりやすいのかかなりわかってきており、下記のような点に注意するとよいでしょう。

■もの忘れ外来

ご自身あるいはまわりに心配な方がいる場合、「もの忘れ外来」 の受診をおすすめします。もの忘れ外来では、(1)認知症かどうか(2)認知症ならどの程度か(重症度)(3)どのタイプの認知症かなどの診断と同時に、治療やケアについても提案していきます。北海道勤医協では、札幌西区病院とメンタルクリニック東が、もの忘れ外来を行っています。まずは、ご相談ください。

《連絡先》
札幌西区病院
011-663-5711
第1、第3木曜日の午前
(予約制)

メンタルクリニック東
011-789-6100
毎週木曜日の午前
(予約制)

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アメリカ・アルツハイマー病協会が提唱する脳を守る10の方法

1.頭が第一
健康は脳からです。最も大切な身体の一部である脳を大切にしよう。

2.脳の健康は心臓から
心臓によいことは脳にもよい。心臓病、高血圧、糖尿病、脳卒中にならないように、できることを毎日続けよう。これらの病気があるとアルツハイマー病になりやすい。

3.自分の値を知ろう
体重、血圧、コレステロール、血糖を望ましい値に保とう。

4.脳に栄養を
脂肪が少なく抗酸化物(ビタミンEなど)の多い食品を摂ろう。

5.体を動かす
身体の運動は血液の流れをよくし、脳細胞を刺激することになるかもしれない。1日30分歩くなど、心と体をいきいきさせるためにできることをしよう。

6.心のジョギング
あなたの脳をいきいきさせ、ものごとに関心をもつことによって、脳の活性を高め、脳細胞とそのつながりの余裕が生まれる。読む、書く、ゲームをする、新しいことを学ぶ、クロスワードパズルをしてみよう。

7.他の人とのつながりを
身体と心と社会の要素を組み合わせた余暇活動は、認知症を防ぐ最もよい方法かもしれない。人との付き合い、会話を交わし、ボランティアをし、クラブに加わり、学習してみよう。

8.頭のケガをしない
頭のケガをしないように注意しましょう。シートベルトを使い、転ばないように家の中を整理し、自転車を乗るときにはヘルメットをかぶろう。

9.健康な習慣を
不健康な習慣を避け、タバコを止め、飲み過ぎないようにし、麻薬をつかわないようにしよう。

10.前向きに考え今日から始めよう
あなたの明日を守るために今日からできることをしよう。


(北海道勤医協友の会新聞2010年2月1日号より)



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2010年02月01日

「電話してくれるのはこの病院だけだよ」

看護現場からの発信

西区病院看護スタッフ

A氏(67歳・男性)は07年5月、他院で胃癌と診断され手術をすすめられていました。 尋常性乾癬でプレドニンを内服していましたが、薬の減量がなかなか進まず、その後治療を中断していました。09年6月に全身倦怠感と右季肋部痛の症状があり、同じ病院に受診したときには、肝転移の末期状態でした。妻のかかりつけであった西区病院に通院希望され、7月に来院しました。

受診後に、2年目め看護師より、気になる患者さんがいるとのことでカンファレンスにかかり、看護歴35年目の看護師がプライマリーナースとなり、参加型看護計画を提示することになりました。

当初は参加型看護計画について、「心配してくれるのはうれしいが、あまりわずらわしいのは好きじゃない」と拒否反応もみられました。病気についても「あとは死ぬだけだ。自分のことが自分でできなくなったり、立てなくなったら入院を考えている。妻には迷惑をかけたくない」と語り、奥さんも、「本人が決めていることなので、したいようにさせてやりたい」と話していました。しだいに痛みも増し、麻薬を増量する中、入院をすすめられても「まだ、自宅で頑張りたい」と訪問看護や往診も拒否されました。私たちは毎日電話で状況を確認し、あきらめずにかかわりました。

A氏から「痛みが楽になったよ。これから山歩きでもしたい気分だ。気にかけてくれてとてもうれしいよ。電話してくれるのはこの病院だけだよ」と話してくれました。しかしその4日後には立ち上がりも困難、意識もうろうとなりました。さらに4日後、家族の説得で入院を決めた翌日の朝、自宅で永眠されました。

その後外来で、初めての家族訪問に行きました。奥さんからこれまでのA氏の生活や最後まで気丈にがんばった様子をうかがいました。予後も厳しいといわれた後は、疎遠になっていた息子さんとの時間をもつことができ喜んでいたことや、最後まで自分でトイレに行くことにこだわり、トイレの外で力尽きたことを知りました。その中でA氏が最後に奥さんに送った「二人の楽しい時間をたくさん作ってくれて感謝している」という愛情のこもったメールを見せていただき、みんなで涙しました。奥さんは「夫は西区病院に来てよかったと言っていました。だから私の言ったとおりでしょと話したの」と教えてくれました。

終末期の患者・家族の揺れ動く思いに寄り添うということは、私たちのあきらめずにかかわる看護実践なのだと確信しました。また、参加型看護計画の実践は外来でも、患者・家族が安心して思いを伝える信頼関係を築くことにつながると、確信を深めることができました。(西医病院 看護師 遠藤 絹子)

(勤医協新聞2010年1月11日号より)
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