
元炭鉱の街、上砂川町を含めた中空知はその歴史から、職業病である「炭坑夫じん肺」の患者さんが多い地域です。今回はじん肺とその合併症予防について紹介します。
◆じん肺とは?
じん肺とは、小さな土ぽこりや金属の粒など「粉じん」を、長年にわたり多量に吸入した結果起きる肺の病気です。粉じんが肺の細胞に蓄積されると、繊維性の組織が増える「線維増殖性変化」が起きて、肺胞や気管支、血管などの組織が壊され肺の機能が奪われていきます。
症状は咳や痰、息切れ、呼吸困難、動悸などがあります。じん肺に対する有効な治療法はなく、対策は合併症に対する治療と予防ということになります。
◆じん肺の歴史
じん肺の歴史は古く、佐渡金山をはじめ多くの鉱山で「よろけ」という病気で恐れられていました。長年坑内で働いていると、いつしか喀血したり呼吸困難に襲われ死んでしまうと言う不治の病でした。
じん肺が最も多く発生したのは戦中から戦後、高度成長期です。その中でも炭 鉱でのじん肺の発生は相当の数に上ります。その対策として国は「じん肺法」「粉じん障害防止規則」を制定し、じん肺の発生予防と、じん肺患者さんの援助を行ってきました。その後の研究で、じん肺は「線維増殖性変化」のほかに、肺胞がふくらんだまま弾力を失う「気腫性変化」や「気道の慢性炎症性変化」を伴うことが明らかになりました。そこで、改正されたじん肺法では、「粉じんを吸うことによって肺に生じた線維性増殖性変化を主体とする疾病」と定義されました。
◆合併症予防のために
以下のじん肺と密接な関係のある合併症にかかった方は、じん肺法の定めにより労災認定されます。
●肺結核
●結核性胸膜炎
●続発性気胸
●続発性気管支拡張症
●続発性気管支炎
●原発性肺がん
これら合併症の予防には健康診断を受けることが大切です。じん肺になった場合、年1回の健康診断を行うことができます。胸部レントゲン、肺のCT検査、呼吸機能検査、咳や痰が出るようになれば、その症状がじん肺の合併症によるものかを調べる痰の検査などが行われます。
現在では、炭鉱や鉱山での労働だけではなく、溶接や研削作業などで生じる金属粉じん、レンズの研磨や陶磁器製造の過程でもじん肺が起こることが知られています。粉じん作業を行う事業所には、労働者に対して定期的なじん肺健診が義務づけられていますが、今でも中小零細企業では健診すら行われていないところもあります。
粉じん作業で働いていた経験がある方で、定期的な健診を受けていなかった方はご注意ください。また、そういう方でじん肺かどうか調べてほしいという方、最近咳や痰が出る、少しの動作で息切れが強くなったという方は、お近くの勤医協の病院・診療所にご相談ください。
(北海道勤医協友の会新聞 2009年6月1日号より)
posted by kin-ikyo at 16:31|
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